AO入試における小論文の書き方
1.小論文とは、何を書けばよいのか?
小論文の基本形は、改題を考察し、その改善策を書く。これが一般的な形になります。なんとも難しいような印象を抱くかもしれませんが、具体例を挙げて説明しましょう。
例えば、野球を例にあげましょう。好きな球団は阪神タイガースです。阪神タイガースは2005年以来、リーグ優勝から遠ざかっており、最近ではBクラスに陥ることもある、決して強いチームではありません。では、阪神タイガースのどこに問題があり、どうすればチームを立て直し優勝を目指せるのか。これはまさに小論文と同じなのです。
つまり書くべきことは、①タイガースの現状、②タイガースの問題はどこにあるか、③その問題点の改善策。これら3つを書けば良いのです。
2.指定字数が違う場合、どうすればよいか?
先ほど、3つのことを書けと説明しました。①現状(タイガースの現状)、②問題点(タイガースの問題はどこにあるか)、③解決策(その問題点の改善策)。確かに小論文は指定される文字数が違うことが良くあります。ですが、書くべきことはこれら3つと決めた方がいいでしょう。800字の場合は250字ずつ、1500字の場合は500字ずつという風にすれば良いのです。
3.段落わけはどうすればよいのか?
AO入試や大学入試で、小論文を課すところは増えています。立命館大学には課題論文方式というAO入試がありますし、関西学院大学のグローバル入試やAO入試でも、日本語小論文の試験があります。しかし、指定される文字数はまちまちです。
段落分けをする場合、大体1段落当たり250~400字程度と考えると良いでしょう。しかしこれは目安であり、これにしばられる必要はありません。皆さんが日ごろ目にしている模試の論説ん分には、1つの文章で1つの段落であるものを見かけることもあると思います。極端な話、それでもいいのです。
段落構成でお勧めするのは、序論➡本論➡結論の、3段落構成です。入試で課される小論文は、800字から1200字程度である場合が多く、この3段落構成はここでも使えます。しかし、事前に提出する小論文では、2000字程度という場合もあります。この場合は本論を2つに分け、4段落構成にすると良いでしょう。
4.序論には何を書けばよいか
まず序論は、導入とも言います。例に挙げた阪神タイガースの論文を書くなら、タイガースの現状について、あるいは個人的見解を述べると良いでしょう。
阪神タイガースの成績は近年低迷し、2005年以来優勝から遠ざかっている。惜しくも優勝を逃し2位になったことも数度あったが、シーズン終盤に息切れして優勝を逃すなど、ファンをイライラさせる状況が続いている。毎年秋になると監督や、コーチの更迭、そしてFA補強の是非が話題になるのは、もう風物詩といえる。
4.本論には何を書けばよいか
本論に書くべきことは問題点です。例に挙げたタイガースでいえば、なぜタイガースの成績が低迷しているのかを深く調べ、そのことで見えてきた問題点を書くことになります。指定された字数が多い場合は、その考察を2つに分けると良いでしょう。
近年、阪神の中心選手はFAで他球団から移籍した選手が担っている。近年では福留や糸井が、その前は金本や新井がチームの中心となり、クリーンナップを担っていた。しかしFA選手は30歳を過ぎて移籍してくるケースが多く、移籍後は長く活躍することが出来ない。そうなると、長期的なチーム作りが難しくなる。
また、外国人選手獲得にも問題がある。大金をはたいて招いた外国人選手が、ことごとく活躍しないのだ。例を挙げよう。2018年に韓国球界で活躍した内野手ロサリオは、3億円を超える年俸で阪神に迎え入れられた。しかし、シーズン終盤、彼は一軍ではなく二軍にいたのだ。彼が活躍できなかったのには訳がある。外角を中心とした配球を苦手としており、弱点をことごとく攻める日本の野球に対応できなかったことが、活躍できなかった一因だ。
5.結論には何を書けばよいか
例に挙げた阪神タイガースの場合、結論で述べることはずばり、タイガースを強くするための方法です。ですがそれは、本論で述べたことに関連していないといけません。
FAで良い選手を他球団から招いても、年齢の面で長くは活躍できない。外国人選手に頼ることも、これまでの例からいえば宝くじを引くようなもので、そうした選手に頼ることにも無理がある。やはり、長期的な視点に立てば、阪神タイガースは若手の育成に舵を切るべきだ。タイガースの場合、他球団に比べ資金力は豊富であるため、育て上げた選手が他球団に流出してしまうことは考えにくい。人気球団であるが故、すぐに結果が求められてしまう状況であることも理解できる。だが、10年以上続いた暗黒時代も、ファンはタイガースを見捨てはしなかった。本当のファンが望んでいるのは、安易な補強などではなく、球団の確固たる意志なのだ。よって球団は、一過性の批判に耐えて、時間がかかるかもしれないが、今いる陽川や中谷、そして覚醒の兆しが見え始めた大山といった若手選手を腰を据えて育て上げるという意思を、ファンに見せなければならない。
6.字数を埋められない生徒は
何を書いていいかわからない。字数が埋まらない。そんな生徒は、テーマが与えられたら、書くべきことを2つ用意する。この練習をしましょう。文章を書く必要はありません。誰かにテーマを与えてもらい、瞬時に2つ答える。この練習をするのです。
例えばこうです。「フェイクニュース」➡「メディアリテラシー+発信者責任」 「AI」➡「人間の仕事の未来+人間が作り出した道具の歴史」 「読書」➡「能動的な情報収集+想像力の効果」こういった具合に。1つのテーマで1つのことを書こうとすると、字数が埋まりません。であるなら、最初から2つのことを用意すればよいのです。もちろんそれら2つには、何らかのつながりがないといけませんけどね。
7.1マス開けるか(字下げについて)
原稿用紙を用いて文章を書く際、段落の最初の文字を1マス開けて書き始めることを字下げと言います。200字程度の短い文章を書く際、この字下げを行うかどうかで迷うことがあるでしょう。特に要約の場合この字下げを行わないと考えている受験生は多くいます。実際は、字下げを行うべきなんか、行わなくてもよいのか、どうなのでしょう?これには、いくつかのケースごとに、字下げすべきか否か、その対応は異なります。
まず、二段落以上に分ける場合は、字下げを行わなければなりません。段落に分けるとなると、やはり字下げは必要なのです。では、一段落だけの場合はどうなのでしょう?この場合は、字下げをしない方が良いと言えます。たしかに、その段落内で意味が2つに買われる場合には、字下げをしても間違えとは言えませんが、好ましい対応とは言えません。
例①(正解)
FAで良い選手を他球団から招いても、年齢の面で長くは活躍できない。外国人選手に頼ることも、これまでの例からいえば宝くじを引くようなものだ。ファンが望んでいるのは、安易な補強による勝利ではない。球団は一過性の批判に耐え、若手選手を腰を据えて育て上げるという意思表示をするべきだ。
例②(間違えとは言えない)
FAで良い選手を他球団から招いても、年齢の面で長くは活躍できない。外国人選手に頼ることも、宝くじを引くようなものだ。また、人気球団であるが故、すぐに結果が求められてしまう状況にあることも確かだが、球団はそうした一過性の批判に耐え、若手選手を腰を据えて育て上げるという意思表示をするべきだ。
例③(正解)
FAで良い選手を他球団から招いても、年齢の面で長くは活躍できない。外国人選手に頼ることも、宝くじを引くようなものだ。
また、人気球団であるが故、すぐに結果が求められてしまう状況にあることも確かだが、球団はそうした一過性の批判に耐え、若手選手を腰を据えて育て上げるという意思表示をするべきだ。