小論文の書き方
1.小論文とは、何を書けばよいのか?
小論文の基本形は、課題を考察しその改善策を書く。これが一般的な形になります。なんとも難しいような印象を抱くかもしれませんが、具体例を挙げて説明しましょう。
野球を例にあげましょう。今回取り上げるのはオリックス・バッファローズです。オリックスはイチローが在籍していた1996年以来、リーグ優勝から遠ざかっており、最近ではBクラスの常連である、決して強いとはいえないチームです。では、オリックス・バッファローズのどこに問題があり、どうすればチームを立て直し優勝を目指せるのか。これはまさに小論文と同じなのです。
つまり書くべきことは、①オリックス・バッファローズの現状、②オリックス・バッファローズの問題はどこにあるか、③その問題点の改善策。これら3つを書けば良いのです。
2.指定字数が違う場合、どうすればよいか?
先ほど、3つのことを書けと説明しました。①現状(オリックス・バッファローズの現状)、②問題点(オリックス・バッファローズの問題はどこにあるか)、③解決策(その問題点の改善策)。確かに小論文は指定される文字数が違うことが良くあります。ですが、書くべきことはこれら3つと決めた方がいいでしょう。800字の場合は250字ずつ、1500字の場合は500字ずつにすれば良いのです。
3.段落わけはどうすればよいのか?
AO入試や大学入試で、小論文を課すところは増えています。立命館大学には課題論文方式というAO入試がありますし、関西学院大学のグローバル入試やAO入試でも、日本語小論文の試験があります。しかし、指定される文字数はまちまちです。
段落分けをする場合、大体1段落当たり250~400字程度と考えると良いでしょう。しかしこれは目安であり、これにしばられる必要はありません。皆さんが日ごろ目にしている模試の論説文には、1つの文章で1つの段落であるものを見かけることもあると思います。極端な話、それでもいいのです。
段落構成でお勧めするのは、序論➡本論➡結論の、3段落構成です。入試で課される小論文は、800字から1200字程度である場合が多く、この3段落構成はここでも使えます。しかし、事前に提出する小論文には、2000字程度という場合もあります。この場合は本論を2つに分け、4段落構成にすると良いでしょう。
4.序論には何を書けばよいか
まず序論は、導入とも言います。例に挙げたオリックス・バッファローズの論文を書くなら、オリックスの現状について述べると良いでしょう。
オリックス・バッファローズの成績は近年低迷し、1996年以来優勝から遠ざかっている。惜しくも優勝を逃し2位になったこともあったが、シーズン終盤に息切れして優勝を逃すなど、ファンをイライラさせる状況が続いている。毎年秋になると監督やコーチの更迭、そしてFA補強の是非が話題になるのは、もう風物詩といえる。
5.本論には何を書けばよいか
本論に書くべきことは問題点です。オリックス・バッファローズでいえば、なぜ成績が低迷しているのかを深く調べ、そのことで見えてきた問題点を書くことになります。指定された字数が多い場合は、その考察を2つに分けると良いでしょう。
近年、オリックス・バッファローズ中心選手はFAで他球団から移籍した選手、もしくは助っ人と言われる外国人選手が担っている。しかしFA選手は30歳を過ぎて移籍してくるケースが多く、長く活躍することが出来ない。そうなると、長期的なチーム作りが難しくなってしまう。また、外国人選手獲得にも問題がある。大金をはたいて招いた外国人選手が、ことごとく活躍しないのだ。例を挙げよう。アメリカ大リーグで活躍したジョーンズ内野手を、2年8億円を超える年俸でオリックスは迎え入れた。しかし、シーズン終盤、彼は一軍ではなく二軍にいたのだ。彼が活躍できなかったのには訳がある。ピークを過ぎた彼は日本という新たな環境には適応できず、日本野球を研究し、新たなスキルを身につけるほど、若くはなかった。これが、彼がオリックスで活躍できなかった一因といえるだろう。
6.結論には何を書けばよいか
結論で述べることはずばり、オリックスを強くするための方法です。ですがそれは、本論で述べたことに関連していないといけません。
FAで良い選手を他球団から招いても、年齢の面で長くは活躍できない。外国人選手に頼ることも、これまでの例からいえば宝くじを引くようなもので、そうした選手に頼ることにも無理がある。やはり、長期的な視点に立てば、オリックスは若手の育成に舵を切るべきだ。オリックスは他球団に比べ資金力は豊富であり、育て上げた選手が他球団に流出してしまうことは防げるだろう。長く続いている暗黒時代も、オリックスを見捨てず応援し続けてくれているファンは多くいる。彼らが望んでいるのは、安易な補強などではなく、球団の確固たる意志だ。よって球団は、時間がかかるかもしれないが、若手優秀な選手を育成するという長期的なビジョンと意思を、ファンに見せなければならない。
7.字数を埋められない生徒は
何を書いていいかわからない。字数が埋まらない。そんな生徒は、テーマが与えられたら、書くべきことを2つ用意する。この練習をしましょう。文章を書く必要はありません。誰かにテーマを与えてもらい、瞬時に2つ答える。この練習をするのです。
例えばこうです。「フェイクニュース」➡「メディアリテラシー+発信者責任」 「AI」➡「人間の仕事の未来+人間が作り出した道具の歴史」 「読書」➡「能動的な情報収集+想像力の効果」こういった具合に。1つのテーマで1つのことを書こうとすると、字数が埋まりません。であるなら、最初から2つのことを用意すればよいのです。もちろんそれら2つには、何らかのつながりがないといけませんけどね。
8.本当に大切なことは
小論文の勉強は、書き方の勉強であると考えている生徒は少なくありません。確かに、書店にいって目にする参考書は、書き方に関するものが多くあります。
しかし書き方云々の前に、何を書くかが重要なのです。書きたいと思えることがなければ、文章にはなりませんし、添削なども出来ません。小論文は書き手の意思や考えを表すものであると捉えると、どう書くのかという技術的な面以上に、やはり何を書くかが重要で、そのためには受験生一人一人の考え方を鍛え上げねばならないという結論にたどり着きます。
当塾では、個人個人の添削ももちろん致します。ですがそれ以上に大切なのは、生徒が集まってそれぞれの小論文を読み、考え方を共有し合う。そんな取り組みであると考えています。実際に小論文の採点では、どれだけ深く物事を見ているのか、多様な視点でテーマを捉えているか。そういったことを採点の基準に掲げている大学があり、そうした力が備われば、どんなテーマでもある程度の文章は書けるようになるのです。